みんな笑顔で明るく幸せそうで、まさに夢の国だった。
でも光が強いと影も濃くなる。
違和感を持ったのはいつからだろう。みんな笑顔なのが怖くなったのはいつからだろう。口を開けば夢の国を褒めそやすのを聞いて苦しくなったのはいつからだろう。
気づけば夢の国が悪夢の国になった。
夢ならまだいい目を覚まして起きればいい。
私は起きてしまった。もしかしたらどこかでずっとずっと夢の国にいたかったのかもしれない。でも夢からさめてしまった。
夢の国は起きると夢ではなくなっていた。
あるのは現実だった。どこまでも、どこまでも続く現実だった。
もう夢はうんざりだ。私は夢の国を信じなくなった。
でも、どこかで、私もみんなが信じる夢を信じたかったのかもしれない。一緒に魔法にかかりたかったのかもしれない。
王子様はやってこない。魔法の馬車も靴もない。
行きたいところには自分で行く。言いたいことは自分の口で伝える。
さようなら、夢の国。もう二度と私の人生とは交わらない。それが嬉しくて、少し悲しい。